コラム
2023.03.24
医事法講座第01回≪医療過誤における過失・医療水準・因果関係について≫
弁護士 崔 信義(さいのぶよし/崔信義法律事務所)Ph.D.
□博士(法学)
□放射線取扱主任者(第1種免状,第2種免状)
□毒物劇物取扱責任者(一般)
□火薬類取扱保安責任者(甲種免状)
□エックス線作業主任者免許
□ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許
□一般財団法人 日本国際飢餓対策機構(理事)
□社会福祉法人 キングスガーデン三重(評議員)
医事法講座第1回≪医療過誤における過失・医療水準・因果関係について≫
1 ≪本講座の目的≫
東北大学大学院博士課程において河上正二先生(当時東北大大学教授,現東京大学名誉教授)のもとで民事法(特に医療過誤事件の因果関係論)のご指導をうけました。医療過誤事件の因果関係論を論じる前提として過失論にも触れ,全体をまとめて「医療過誤訴訟における最高裁判決の規範化に関する研究」という博士論文として提出しました。河上先生に目を通していただいた博士論文であるにもかかわらず,現在まで書棚に眠らせたままでいたのですが,このままでは,先生に対しても申し訳ないという気持ちにもなりました。
そこで,博士論文を区切りの良い項目ごとに要約し,最新の知見をも付け加えながら皆さんにお届けするのも良いのではないかという思いに至ったのが本講座を始める動機です。東北大学大学院博士課程での河上先生によるご指導の下での最高裁判決の分析が,私が法律実務家として取り組んできた放射線法疫学の基盤になっています。
本講座では,以下のとおり,医療過誤における過失・医療水準・因果関係の3つの分野の最高裁判例に関して,最新の学問的知見を取り入れて今一度を取り上げたいと思います。
2 過失に関する最高裁判例
① 注射化膿事件(昭和32年5月10日最二判)
② 消毒不完全事件(昭和39年7月28日最三判)
③ 水虫治療事件(昭和44年2月6日最一判)
④ 狂犬病予防接種事件(昭和39年11月24日最三判)
⑤ 輸血梅毒感染事件(昭和36年2月16日最一判)
⑥ インフルエンザ予防接種事件(昭和51年9月30日最一判)
⑦ 痘そう予防接種事件(平成3年4月19日最二判)
⑧ 薬剤能書事件(昭和60年4月9日最三判)
3 医療水準論(未熟児網膜症裁判)
⑴ 昭和50年代の最高裁判決
⑨ 長崎市民病院事件(昭和54年11月13日最三判)
⑩ 日赤高山病院事件(昭和57年3月30日最三判)
⑪ 新小倉病院事件(昭和57年7月20日最三判)
⑵ 昭和60年代の最高裁判決
⑫ 南大阪病院事件(昭和60年3月26日最三判)
⑬ 坂出市立病院事件(昭和61年5月30日最二判)
⑭ 八幡病院事件(昭和63年1月19日最三判)
⑮ 名古屋掖済会病院事件(昭和63年3月31日最一判)
⑶ 平成年代の最高裁判決
⑯ 山田赤十字病院事件(平成4年6月8日最二判)
⑰ 姫路日赤事件(平成7年6月9日最二判)
4 医療過誤訴訟における因果関係
⑱ ルンバール事件(昭和50年10月24日最二判)
5 不作為の因果関係
⑲ 肝細胞がん事件(平成11年2月25日最一判)
⑳ 横浜総合病院事件(平成12年9月22日最二判)
㉑ 急性脳症事件(平成15年11月11日最三判)
㉒ 食道がん事件(平成15年11月14日最二判)
㉓ スキルス胃がん事件(平成16年01月15日最一判)
6 参考文献については随時指摘します。
以上